俳句・随筆 

2018年、俳誌「風土」に掲載された10行随筆と俳句を掲載しています。その他、静岡新聞サロン・俳句に掲載された作品、文芸やいづで入選した俳句を掲載しました。

 

〈 産地〉                     

 子どもの頃、お茶の種類など興味はなかったが大人になって「川根茶」を飲んでいたことが分かった。「島田茶」は飲んだ時の鼻に抜ける風味が印象的だったこともあり一目置いている。お茶屋さんに行くと、色々な産地のお茶が並んでいて四季ごとのお茶を楽しめ飽きることがない。今、冷蔵庫のガラスポットには「掛川茶」が冷えている。出かけるときは「牧之原」の抹茶緑茶と氷も加え、濃い緑と味を楽しんでいる。

・新じゃがのま白き肌日に透かし

・港町鰹の看板初つばめ

・天守閣火灯窓より初夏の風

・桜えび漁船団の波飛沫

・しらす干すブルーシートの四隅まで

(俳誌「風土」2018/8月号掲載分転載)

 

〈指揮者〉                    

  ママさんコーラスに通っていたときのこと。指揮を執る先生は80歳になるが乙女のような高音で、明るいブラウスが印象的だった。感心させられたのは指揮をとるときの姿勢だ。左右の腕を大きく振り背筋が真っ直ぐになり、少しずつ後ろに反っていく。その姿を見るだけでぐっとくるものがある。同じ年齢になった時、「私はいったい何をしているのだろうか」と考えさせられた。

・SLの汽笛に目覚む姫すみれ

・白あんの透けて薄紅桜餅

・噛むほどに花菜おひたしほろ苦く

・そりかえる傘寿の指揮者鳥雲に(行人抄掲載)

・路地裏に牛鍋にほふ宵の春

(俳誌「風土」2018/7月号掲載分転載)

 

 〈心機一転〉           

 色々な案件が重なると今なにをすべきか悩むことがある。あれこれそれと気になるのだ。しまいには、さっき食べたクッキーのサクサク感が忘れられなく時間だけが過ぎてゆく。気持ちを切り替えようと思わず両手を「シャン!」と思いきり叩いてみた。一本締めのように。両手がジーンと痛くなったがその瞬間雑念がパラパラと飛び「10行随筆」にとりかかることができた。

・ 江戸っ子の粋な台詞や春祭り

・くきくきと和布の茎のお吸ひ物

・公魚の南蛮辛しむせにけり

・立春や上弦の月耿耿と

・氷川丸はタイムトラベル遠霞み

(俳誌『風土』2018/6月号掲載分転載)

 

 〈こだわり〉

 お茶好きが高じて気づけば急須にこだわるようになっていた。デザインが気にいって購入しても実際に使用しなければ使い勝ってが分からないので賭けみたいなものだ。数年前、ズボラな私にピッタリの急須を見つけた。お茶屋さんで使用する蓋の無い急須だ。シンプルな形も気に入っている。持ち手の角度がしっくりきて最後の一滴も注ぎきれる優れ物。これで2個めだが今度こそ割らないようにしたい。

・マスク付け眼鏡かけをる誰彼そ

・野の春やカピバラ親子寄り添ひて

・あたたかや桃色五色水絵具

・鳥曇薄紅霞む水絵具

・蓋とるや菜の花香る茶碗蒸し

(俳誌『風土』2018/5月号掲載分転載)

 

 〈別世界〉

 先日、思いがけず時代物の芝居を観る機会に得た。江戸ことばでやりとりする粋な台詞が新鮮だ。時間の経つのも忘れ、いつの間にか舞台の世界に入っていた。運よく桟敷の横が花道だったので、役者の顔を一瞬ではあるが見上げることもできた。きりっとした端正な顔立ち、真剣な眼差しにドキッとした。長時間だったが頃合いを見計らって笑いをとることも忘れていない。久しぶりに日常から離れたひと時を楽しんだ。

・立春の浜さざ波の子守唄

・ぬか床の隅に隠れて蕪かな

・敷き詰めて地に薄紅の寒椿

・冬蝶の高く舞へるを追ひにけり

・梅東風や柔らかきこと母の笑み

(俳誌『風土』2018/4月号掲載分転載)

 

 〈仕事はじめ〉

 正月明けから挿絵の依頼が約20点舞い込んできた。想像力が試される仕事だ。締め切りは、2週間後。アイデアが天から降りてくるなどと言っている余裕もない。外出を極力控え引きこもりで仕上げていく。下書きをチェックしてもらい何枚か描き直す。どうにか間に合いそうだ、と思っていたら一番大きな作品の色変更の要請が入り一から描き直し。右腕が筋肉痛になりながらも締め切り日に納品することができた。

・初風呂や下五浮かびて湯に溶けて

・終はりなき俳諧の道青木の実

・初景色澄たる天へ身を反らす

・煤払い箪笥の裏に豆一つ

・冬日和銀の絹織る駿河湾

(俳誌『風土』2018/3月号掲載分転載)

 

〈その魅力は〉

 我が家の玄関を出ると遠くに富士山が見える。かなり雪が積もってきたが、白い帽子をすっぽりかぶるのはいつ頃になるだろうか。近くの大井川の太平橋から眺める富士山は運が良ければ雲の上に浮いて見える。運転中に飛び込んでくるので短い時間しか見ることはできないが声に出るほど感動する。四季折々、違った表情を見せてくれる富士山。ざわついた日常を一瞬でも真っさらにしてくれる魅力は語り尽くせない。

・おでん酒だしたっぷりに黒はんぺん

・露天湯の暗き洞窟冬怒涛

・立冬のこころを空へ息をつく

・流れ雲瑠璃桃黄色冬茜

・連山や翳深くして冬の滝

(俳誌『風土』2018/2月号掲載分転載)

 

・秋うらら親子をむすぶ影法師

・謡うかに仙石原のすすきの穂

・露天湯の湯気の向かうや秋の声

・冴え冴えと嶺の夕映え立ちつくす

(俳誌『風土』2018/1月号掲載分転載)


文芸やいづ

 俳句部門に応募し五句入選しました。

【青目高】

・湯上りに風鈴の音肌を打つ

・悠々とわずかな時を舞ふ蛍

・大鉢に背中の光る青目高

・昼の庭に凛と佇む立葵

・光り差し風と歌うや白き蓮

(文芸やいづ第28号掲載分転載)

 

静岡新聞/読者のページ「サロン・俳句」

・鷺草の翔ぶが如くに羽広ぐ

(静岡新聞/「サロン」俳句・川柳 2018/8/3 掲載分転載)

・くきくきと和布の茎のお吸ひ物

静岡新聞/「サロン」俳句・川柳 2018/6/8掲載分転載)

 ・噛むほどに花菜おひたしほろ苦く

静岡新聞/「サロン」俳句・川柳 2018/5/11 掲載分転載)

 ・仲秋や野山ゆつくり色づいて

静岡新聞/「サロン」俳句・川柳 2017/10/13 掲載分転載)